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老い支度とは? 終活とは違う、自分らしく暮らすための準備を徹底解説!

 断捨離や終活、墓じまいなど、人生の終わりに向けた準備は気にするのに、いつまでも安心して、自分らしく暮らし続けるための準備『老い支度』を忘れていませんか?

 元気な時は何も意識せずにできていたことが、体調を崩したり、ケガで思うようにできなくなると急に不安が増してきます。
 本当は「やりたい」と思いながらできない事、やれると思っているのに周りの人たちに止められてできないことが増えてくる、そんな高齢期の暮らしの為に準備すべきは『老い支度』です。

「老い支度」と「終活」の違いとは

 こどもの成長期は、できることが増えていく「獲得の時代」。「ハイハイができた!」「つかまり立ちをするようになった!」「学校に入学した」とできることと、行動範囲が広がるたびに、周囲に喜びが溢れます。一方の高齢期は、獲得してきた様々なことや物を、それぞれのタイミングで手放していく時代です。
 そんな老いの時代の終活は、人生を自分らしく終えるための準備。墓じまいや遺言の作成、コンパクトに暮らすための家の片付けなど、今までの人生を整理し、自分がこの世を去った後、後片付けに家族が大変な思いをしないように準備する活動です。
 「老い支度」は、様々なことが自分ではできなくなってくる超高齢期を、自分らしく生きるための準備です。例えば、住む場所を自分で決める、食べたいものを自分で選んで食べる、やりたいことに取り組むことができる、そんな今は「当たり前」と感じることを継続できる環境を整えておくことが大事です。体力や判断力が衰えた後では、老い支度をすることは困難です。しっかり自分のこと、家族のことを考えることができる元気な時に、この世を去るその日まで自分らしく暮らす準備、「老い支度」に取りかかりましょう。

「老い支度」に必要な準備

 まずは、住環境を見直します。今暮らしている住宅にはいつまで住み続けることができるのか、改めて確認しておきましょう。元気な時には気づかないトイレや階段、台所など足腰が弱くなっても、自立した生活ができる環境が整っているのかを検証してみることが大事です。必要があればバリアフリーのリフォーム工事をしたり、環境の整った住宅に引っ越すなど、先々を見据えて準備をしておきましよう。
 次に、お金の管理を誰に任せるか、自分の意思を尊重して自分のためにお金を使う環境を整えておくことが大事です。「自分の財産を、他人に任せられるか!」と考える人もいますが、超高齢期に入ると、自分はできていると思っていても、キャッシュカードの暗証番号を忘れたり、印鑑が見当たらなくなって何度も印鑑変更が必要になり、必要な時にお金を下ろすことができないなど、元気な時には考えられないことが起きてきます。そうなってからでは、必要な準備ができないことに、気づいていない人がとても多いのが現代です。

「老い支度」でやっておくべきこと

 「自宅で最期迎えたい」と考えていても、自立した生活が難しくなり、施設に入る方が多くなります。そんな施設選びも、必要に迫られて空きを探すと、入所してから後悔することにもなりかねません。最後は施設入所と考えているのであれば、元気なうちに複数の施設を見学して、自分の生活スタイルに合った、気に入った施設を見つけておくことをお勧めします。
 そして、入所契約や料金の支払いなど、自分の代わりにできる人を決めておく「財産管理委任契約」と「任意後見契約」を作っておくことです。
 現在は、入院や認知症など、自分で判断できなくなってから、慌てて後見制度を利用する人が多いので、ご本人をよく知らない後見人が財産管理を任され、「後見制度を使うと、財産を取り上げられて、自分では使えない」というような、誤解が多く聞こえてきます。これは、現在最も利用が多い「法定後見制度」のことで、実はもう一つ「任意後見制度」という後見制度があります。こちらの後見制度は、ご本人が指定した人と交わす「任意後見契約」という契約を、法律の専門家である公証人が契約内容に法的な問題点が無いかを確認して書類を作り、公証人立会いのもと契約を交わす制度です。

「老い支度」で準備しておきたい「財産管理委任契約」について

 役所の手続きや銀行でお金を下して、期日までに様々な支払をする・・・普段の暮らしで、それらを自分ですることに不安を感じることはありません。ところが、長期の入院が必要になり、外出ができなくなったら、入院中の医療費を支払えないまま退院を迎え、多額の医療費請求に呆然とする・・一人暮らしのリスクは、そんなところにあったりします。家族や兄弟が立替えて払ってくれると言っても、限度があります。
 「財産管理委任契約」は、まだ判断力は十分にある時期に、体調の悪化や入院で、自分で支払いや手続きに出向くことができなくなった時、代わりにやってくれる人を指定する契約です。この契約の場合は、頼んだ仕事の結果を自分でしっかり管理監督する契約なので、回復して自分でできるようになったら「次回またお願いね」と一旦休止することができます。
 ただ、困ったことを相談したり、体調の変化に気付くことができるように、何もない時にも月に一度や2ヶ月に一度など、定期的に訪問する「見守り契約」とセットで契約する方が安心です。
 元気な時には「見守り契約」で定期的にご本人と会い、他愛もない会話から、生き方や考え方、信条などを知り、自分でできない状況になった時には「財産管理委任契約」を発動して暮らしを守る、任意後見が始まった時のご本人のための活動の基礎作りの期間にもなります。

「老い支度」に役立つもう一つの後見制度「任意後見契約」について

 財産管理委任契約は自分で仕事の結果を管理監督します。例えば銀行から現金を下してくることを依頼したら、現金を受取り通帳の残高と合っていることをチェックできるうちは、財産管理委任契約で十分です。
 ところが、認知症などの症状が進み、通帳を見ても残高が合っているかが分からない、計算が面倒で確認はどうでもいい・・そんなことが増えてくると、受任者が約束通りに仕事をしたのかチェックができません。これはもう判断力が衰えてきている兆候で、「任意後見」を始めるタイミングです。
 任意後見が始まると、それまで自分で管理監督していた財産管理の状態は、家庭裁判所が決めた「任意後見監督人」がご本人に代わって行います。
 任意後見人の活動は、事前に話し合って作った任意後見契約の内容に沿った活動です。任意後見人は通帳の他ご本人の財産全てを管理しますが、ご本人の意向に沿って財産の出し入れを行い、ご本人の意思を尊重して活動しているかを任意後見監督人がチェックして、家庭裁判所に報告するのが、任意後見制度です。
 ご本人のことをよく知っている任意後見人が活動するので、一部の法定後見制度よりもご本人の意思を大切にした活動になります。

ライフプランを作って、早めの老い支度を。

 これらの契約で活動する財産管理受任者や任意後見人の活動を、善意に期待して無償のボランティアを頼るわけにはいきません。適切な報酬を支払い、仕事としてしっかり義務を果たしてもらう必要があります。報酬の額は自分の財産とそれを管理することになる受任者と相談の上、途中で財産が不足する事態にならないように計算し、互いに合意して報酬の額を決めることになります。
 そんな高齢期にかかるお金も念頭に、将来の預貯金推移をシミュレーションし目で見て確認できるキャッシュフロー表の作成は、自分らしく暮らす資金を準備するためにとても重要です。
 結婚、出産、子育て、教育資金など、年代ごとに変化する生活資金とリスクに備える方法を検討するには、将来どんな暮らしをしたいのかを目に見える形にする「ライフプラン」を作ることから始まります。
 80代90代になっても「老後が心配」と少ない年金を貯金するのではなく、高齢になっても自分らしく暮らし、超高齢期を安心して過ごすための資金作りを、ライフプランをもとに一緒に考えましょう。